京都広告事件(平5・3・26最判) 賃金債権の民事調停申し立てによる中断効の成否は? ★
民法151条が類推適用される
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y会社に永年勤務していた従業員であるが、内紛等によりへ昭和57年1月及び同58年4月の2回にわたって基本給を一方的に減額された。そこで、Xは、平成元年2月22日、XがY会社から支払いを受けるべき基本給が月額19万4000円であることの確認を求めるとともに、右19万4000円とY会社による支給額との差額等の支払いを求めて、京都簡易裁判所に調停の申立てをしたが、右調停は、同年10月18日、不成立によって終了したため、Xは、同年11月16日、右差額の支払請求を含む訴えを提起した。
第一審、二審とも、基本給の一方的変更は効力を有さないとして、Xの勝訴となった。そして、Y会社の消滅時効の抗弁に対して、第二審は「調停終了から2週間以上経過して訴えが提起された場合には、右調停申立てをもって訴えの提起とみなすことができないのは、民事調停法上明らかであるが、調停申立てによって、権利行使の意思が表示された場合には、これに催告としての効力を認めることができるというべきである。…そして、右催告の効力は調停の係属中存続するものと解すべきであり、調停が終了してから6カ月以内に訴えを提起することにより、右調停申立てによる権利行使意思の表示が確定的に時効中断の効力を有することになる」と判示して、調停不調時より6カ月以内に本訴が提起されている本件では、調停申立時たる平成元年2月22日より2年前たる昭和62年2月22日以降に履行期が到来した賃金債権については、時効は確定的に中断しているとした。
そこで、Y会社は右判断等を不服として最高裁に上告に及んだ。
判決のポイント
民事調停法に基づく調停の申立ては、自己の権利に関する紛争を裁判所の関与の下に解決し、その権利を確定することを目的とする点において、裁判上の和解の申立てと異なるところがないから、…
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