南労会事件(平5・9・27大阪地決) 従業員の使用者に対する就労請求は認められるか
1993.12.20
【判決日:1993.09.27】
義務であって権利ではない
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
債権者は、診療所等を経営することを目的とする医療法人であり、松浦診療所を開設している。
債務者は、債権者の前身である松浦診療所に就職し、医療法人化された後も同診療所医事科(医療事務、受付)の職員として就業してきた。
債権者は債務者に対し、平成4年12月19日付けで、A理事に対する暴言、B事務長に対する名誉毀損、無許可ビラ貼付、C課長に対する強要を理由として、債務者を懲戒解雇とする旨の意思表示をした。
債務者は解雇の意思表示を受けた後も、債権者からの制止、警告にかかわらず、従前同様就業を続けている。
判決のポイント
雇傭契約は、労働者が使用者に対して労務に服することを約し使用者がこれにその報酬を与えることを内容とするものであり(民法623条)、労務の提供と賃金の支払が対価関係に立つと解されるところ、使用者による労務の受容拒否は受領遅滞となりうるは格別、すすんで労務の受容を強制されるとする法理論的根拠は見出し難く、法的権利としての就労請求権は、これを否定するのが相当である。…
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平成5年12月20日第1989号10面 掲載