日立製作所武蔵工場事件(平3・11・28最判) 残業命令の有効要件 ★
具体的事由、上限の明示を
筆者:弁護士 宮本 光雄(経営法曹会議)
判決の概要
会社は、当日の午後4時30分頃上告人に対し、同日残業してトランジスター製造の歩留りが低下した原因を究明し、その推定値を算出し直すよう命じたが、上告人は残業命令に従わなかった。
会社の就業規則には、業務上の都合によりやむを得えない場合には、上告人の加入する組合との協定により1日8時間の実働時間を延長することがあると定められていた。
そして、組合(過半数)との間には、①納期に完納しないと重大な支障を起こすおそれのある場合、②貸金締切りの切迫による賃金計算又は棚卸し、検収・支払い等に関する業務ならびにこれに関連する業務、③配管、配線工事等のため所定時間内に作業することが困難な場合、④設備機械類の移動、設置、修理等のため作業を急ぐ場合、生産目標達成のため必要ある場合、⑥業務の内容によりやむを得ない場合、⑦その他前各号に準ずる理由のある場合等残業を命ずることがある事由を7項目にわたって列挙し、併せて月の残業時間は40時間を超えないものとするが、緊急やむを得ず月40時間を超える場合は超過予定時間を一括して予め協定する旨の協定が締結され、監督署に届けられていた。
会社は、上告人の前記残業拒否とそれ以前の上告人の非違行為を併せて懲戒解雇した。
判決のポイント
会社が残業を命じ、労働者がこれに従わなければならないのは次の要件を満たしている場合である。
(1)会社が適法な36協定を締結し、これを監督署に届け出ていること。…
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