日本国有鉄道事件(平3・11・19最判) 争議行為日の年休指定

1992.01.20 【判決日:1991.11.19】
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“職場離脱”で趣旨に反する

筆者:弁護士 安西 愈(中央大学講師)

判決の概要

 動労千葉は、国鉄分割・民営化阻止、10万人首切り合理化粉砕等を目標に掲げ、当初の予定を前日に繰り上げ昭和60年11月28日正午から翌29日正午までの24時間にわたり、津田沼支部及び二葉運転区支部を拠点とし、千葉以西乗入れの旅客列車乗務員を対象とする指名ストライキを実施し、これにより右両日にわたり、総武快速線、同緩行線等で多数の旅客列車等が運休、遅延するなどの影響が生じた。

 上告人は、同月21日所属長である津田沼電車区長に対し、その有する年次休暇の日数の範囲で、同月28日の午後半日の年次休暇の請求をしていたが、同月27日、動労千葉は、当初同月29日に予定していたストライキを繰り上げて同月28日正午から実施する旨を決定した。

 このことを上告人は組合内部の情報により知ると、助役にただして年次休暇の請求が事実上承認されていることを確認しながら、右請求をそのまま維持した上、同月28日午後は勤務しなかった。

 その間、上告人は、同日午前11時55分ころから動労千葉津田沼支部事務所わきで開かれた組合員の集会に参加し、同日午後4時過ぎころから同6時過ぎころまでの間に津田沼電車区構内で行われたストライキ決起集会では、本部執行委員とともに組合員らの前に立ってシュプレヒコールの指揮をし、また、同日午後1時過ぎころ同電車区指導員詰所において、助役に対し、当局側が当日のストライキ対策のため指導員を乗務させたことにつき大声で詰問、抗議するなどして、同助役の職務の執行を妨害し、右争議行為に積極的役割を果たした。

 この事実によれば、上告人は、右の争議行為に参加しその所属する事業場である津田沼電車区の正常な業務の運営を阻害する目的をもって、たまたま先にした年次休暇の請求を当局側が事実上承認しているのを幸い、この請求を維持し、職場を離脱したものであって、本来の年次休暇権の行使とはいえないから、上告人の請求に係る時季指定日には年次休暇は成立しないというべきであり、当日はストライキによる欠務と認められる。

判決のポイント

 本件のポイントは、事前に請求し承認されていた年休日に、労働者の所属する労働組合がストライキを行い、本人がそれに参加し、事業の正常な運営を妨げる目的をもって行為した場合、…

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平成4年1月20日第1897号10面 掲載
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