三洋電機事件(平3・10・22大阪地判) 定勤社員雇止めの要件
まず十分な回避努力を
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
判決の概要
会社は、契約期間1年の労働契約を締結して契約更新を重ねた「定勤社員」につき、経営環境の悪化などを理由として、ほぼ全員を雇止めにした。
本件判決は、要旨次のように述べて雇止めは無効であると判断している。
「定勤社員契約は、1年という期間の定めのある労働契約にほかならないというべきであって、これが当初から期間の定めのない労働契約であったということができないことは明らかであるし、反復更新を繰り返したとはいえ、そのことのみによって、期間の定めのある労働契約が期間の定めのない労働契約に転化したということもできない。定勤社員契約が、その実質において期間の定めのない労働契約と異ならない状態で存在していたということもできないというべきである」
「定勤社員契約において合意された契約更新の定めは、被申請人が経営内容の悪化により操業停止に追いやられるなど従業員数の削減を行うほかやむを得ない特段の事情のない限り、契約期間満了後も継続して定勤社員として雇用することを予定しているものというべきであり、定勤社員を雇止めにするについては、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結している正社員を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があることは否定できないものの、解雇に関する法理が類推され、右の趣旨の特段事情のある場合に限って雇止めができるものというべきである」
「各事業部における操業が、規模を縮小するものがあるとしてもなお継続する状況の下において、被申請人が、定勤社員だけについて、そのほぼ全員を対象として同時かつ一挙に定勤社員契約を解消させるような本件雇止めを行わなければならないほどの真にやむを得ない理由があったとはいいがたい。そうすると、被申請人としては当時まず定勤社員の中で希望退職者を募り、または各定勤社員の個別的事情を考慮するなどして、雇止めの対象を定勤社員の一部にとどめる措置を講じるのが相当であった」
「本件雇止めは、十分な回避努力を欠く点において合理的理由のない労使間の信義則に反する措置というべきであって、雇止めを正当化しうる前記趣旨での特段の事情があったとは認めがたい」
判決のポイント
期間の定めのある従業員の人員整理の事案でありながら、日立メディコ事件の最高裁昭61・12・4判決と異なり、雇止めを無効とした判決であり、その相違した理由がどこにあるかが重要である。…
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