紅屋商事事件(平3・6・4最判) 申立期間と「継続する行為」 ★
最高裁が初めての判断
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
判決の概要
上告人会社は、昭和53年度の賃上げに関し同4月に昇給昇格査定を行い、6月に昇給率を公表し、組合と同7月8日に賃上げ協定を締結し、7月15日に4月~6月分の賃上げ差額分の支給を行った。組合は、同7月17日に右賃上げについて組合員と非組合員に格差が生じているとして、青森県地方労働委員会に、不当労働行為救済申立てを行った(第一事件)。
昭和54年度の賃上げに際しても、会社は4月に昇給昇格査定を行い、6月に昇給率を公表し、7月14日に組合と賃上げ協定を締結し、7月26日に4月~6月分の賃上げ差額分の支給を行った。組合は右年度についても、格差が生じているとして7月22日に同委員会に救済申立てを行った(第二事件)。
青森県地方労働委員会は、両事件について右賃上げの格差についての組合の主張をほぼ認め、是正を命ずる命令を発したので、会社は右救済命令の取り消しを求める行政訴訟を提起したが、青森地裁、仙台高裁とも右賃上げに関しては会社の主張を斥けた。そこで会社は上告に及び、本件各申立ては労組法27条2項で定める1年を徒過する申立てであるから、却下されるべきであると主張したが、最高裁は以下の通り説示して、右部分の上告を棄却した。
「上告人が毎年行っている昇給に関する考課査定は、その従業員の向後1年間における毎月の賃金額の基準となる評定値を定めるものであるところ、右のような考課査定において使用者が労働組合の組合員について組合員であることを理由として他の従業員より低く査定した場合、その賃金上の差別的取扱いの意図は、賃金の支払によって具体的に実現されるのであって、右査定とこれに基づく毎月の賃金の支払とは一体として1個の不当労働行為をなすものとみるべきである。そうすると、右査定に基づく賃金が支払われている限り不当労働行為は継続することになるから、右査定に基づく賃金上の差別的取扱いの是正を求める救済の申立てが右査定に基づく賃金の最後の支払の時から1年以内にされたときは、右救済の申立ては、労働組合法27条2項の定める期間内にされたものとして適法というべきである」。
判決のポイント
中労委や各地の地労委において取扱いが異なり混乱を極めていた賃金差別に関する不当労働行為救済申立期間の解釈について、最高裁判所として初めて判示したものであり、…
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