名古屋学院事件(平3・5・31名古屋地判) 年金廃止の就業規則変更 ★
必要性・内容が合理的なら
筆者:弁護士 安西 愈(中央大学法学部講師)
事案の概要
本件事実関係はかなり複雑であるが、一般化できるものに限って要約すると、次のようになる。
本件学院ではいろいろの経緯から、本件就業規則改正問題時の昭和52年頃には、被告学院及び原告ら職員が従前から本件年金制度以外に私学共済年金制度にも加入しており、さらに、昭和41年に愛知県私立学校退職金財団が設立され、被告学院が右財団に加入するため、学内年金資金に拠出していた職員の俸給の5%分を財団の拠出金に当てることとし、学内年金資金(本件年金)への拠出金は職員と学院ともに1%にしていた。
そのほかに、退職金規定による退職金もあり、職員には退職した際には、①私学共済年金、②私立学校退職金財団よりの退職金、③学院の独自年金、④学院の退職金という多重なものになっていたようである。
ところが被告学院の経営悪化による財政難からこの独自年金が継続できなくなり、本件年金について、廃止することにした。
その廃止後の年金制度の内容は、以下のとおりである。
(1) 昭和52年3月31日をもって職員全員が退職したものとして、本件年金一時金を算出し凍結する。ただし、年金受給資格が発生している勤続20年以上の者については、年金受給者が将来の年金請求権を放棄することを条件として請求することができる5年間分の年金額を凍結する。
(2) 前項の年金一時金凍結額の支払方法は、現行退職金支給乗率による退職金額と年金一時金凍結額との合計額又は改定退職金支給乗率による退職金のいずれか一方を、本人の選択により退職時に支給するものとする。
等というものである。
これにつき、①原告らが、右年金制度を定めた年金規程が効力を有することの確認、②原告らが、右年金規程に基づく年金を受給し得る地位にあることの確認、③原告のうちの退職者(1名)が、右退職金規程に基づく年金の支払いを求めたものであるが、判決は右請求をいずれも棄却した。
判決のポイント
①昭和50年度の時点において、長期的展望によった場合、本件年金制度を放置すれば被告学院経常会計から本件年金基金に毎年補填をしなければならなくなることが明らかになり、…
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