未払賃金等請求事件(最二小判令5・3・10) 月給決めて歩合給と残業代を振り分ける方法は 通常の賃金と判別できない ★
月給から基本給を控除し、その残額を歩合給と割増賃金に割り振っていた事案で、最高裁は原審を破棄して割増賃金が支払われていないと判断。残業時間に応じて時間外手当は増えるが調整手当が減る仕組みだった。賃金制度を見直して歩合給の一部を名目のみ調整手当に置き換えたもので、通常の労働時間の賃金を相当程度含むため、割増賃金部分と判別できないとした。
名目のみ置き換え 原審破棄し差戻し
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
被上告人においては、雇用契約締結当時、就業規則の定めにかかわらず、日々の業務内容等に応じて月ごとの賃金総額を決定したうえで、その賃金総額から基本給と基本歩合給を差し引いた額を時間外手当とするとの賃金体系が採用されていた。
被上告人は、平成27年5月、熊本労働基準監督署から適正な労働時間の管理を行うよう指導を受けたことを契機として、就業規則を変更した。新たな賃金体系では、このうち本件時間外手当の額は、基本給、基本歩合給、勤続手当等を通常の労働時間の賃金として、労基法37条等に定められた方法により算定した額であり、調整手当の額は、本件割増賃金の総額から本件時間外手当の額を差し引いた額である(本件割増賃金の総額の算定方法は旧給与体系と同様に業務内容等に応じて決定される月ごとの賃金総額から基本給等の合計額を差し引いたものである)。
新給与体系の下において、上告人を含む被上告人の労働者の総労働時間やこれらの者に現に支払われた賃金総額は、旧給与体系の下におけるものとほとんど変わらなかったが、旧給与体系に比して基本給が増額された一方で基本歩合給が大幅に減額され、上記のとおり新たに調整手当が導入されることとなり、この仕組みの適否が問題となった。
判決のポイント
新給与体系の下においては、…
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