三菱重工業事件(平4・3・26長崎地判) 計画年休と少数組合 ★
適法な労使協定なら「拘束」
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被告会社は、昭和63年12月21日、長崎造船所の全従業員の半数以上(約98%)の従業員で構成される全日本民間労働組合連合会全国造船重機械労働組合連合会三菱重工労働組合長崎造船支部(重工労組)との間で、昭和64年7月25日及び26日の2日を計画年休とし、各人の保有する年休のうち2日を年初に計画年休に充当することなどを内容とする書面による協定を締結し、有給休暇を与える時季に関する定めをした。また、年休に関する就業規則にも、計画年休についての規定が新設された。
被告会社は、右労使協定に従い、平成元年7月25日及び26日の2日を長崎造船所における計画年休として実施した。
原告らは、選定当事者である。選定者らは、いずれも被告会社長崎造船所に勤務する従業員であり、全国一般労働組合長崎地方本部長崎連帯支部長崎造船分会(長船労組)に所属している組合員である。
本件は、選定当事者である原告らが、被告会社が労働基準法39条5項に基づき年次有給休暇の計画的付与を実施したことに対し、それが違法無効であるとして、選定者らの残存保有有給休暇の日数の確認を求めるとともに、原告草野光善が、残存する年休の保有日数を超えて休暇をとったとされ、これにより所定の賃金を控除されたことを争い、その控除分の賃金の支払いを請求した事案である。
判決のポイント
労基法上、労使協定による計画年休制度が新設されたことにより、年休日の特定を完全に労働者個人の権利としていた従来の建前は改められ、前記の個人的事由による取得のために留保された5日を超える日数については、…
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