浅野工事事件(平3・12・24東京地判) 「使用者の承認」を要件とした早期退職優遇制度 ★
合意解約のみでも有効
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、雇用契約を解約告知してY会社を退職した労働者Xらが、定年前に退職する社員に対する早期退職制度に基づく割増退職金の支払いを求めた事案である。
Y会社では、社員の年齢構成を改善し、企業の活性化を図るため早期退職制度が制定されていた。
この制度は、割増退職金を支給するもので、「満48歳以上58歳未満の社員で、この制度による退職を希望し、会社が認めた者に適用する」こととされていた。
Y会社では、本制度制定後、9名については、早期退職制度を適用し割増退職金が支払われていたが、このうち1名については、会社が慰留したが、結局退職が認められ、会社の指示で当該制度の適用を希望する旨を記載した退職届を提出して割増退職金を受領し、他の8名については特段の慰留もなく退職し割増金を受領している。この他、会社の慰留が成功せず退職した者で、当該制度の適用を希望しなかったため割増金を支給しなかった者が1名いた。また、退職を希望したが慰留され、勤務を継続している者が2名いた。
本件の争点は、まず、本制度が合意退職でない労働者の一方的な解約告知による退職にも適用されるかであり、第2点は、本制度の適用をY会社の承認にかからせている点が、公序良俗に反しないかである。
判決のポイント
判旨は、第1点について「本件早期退職制度は、Y会社と従業員との間で雇用契約を解約して退職する旨の合意が成立することを要件としており、この合意が成立せずにいずれか一方から雇用契約の解約告知をする場合には適用されないとの趣旨で制定されたものといわざるを得ない」と判示し、第2点については、…
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