京都広告事件(平3・3・20京都地判) 基本給の一方的減額 ★
「事情変更の法理」適用なら
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告は大学卒業後被告会社に入社して以来、営業(広告取材業務)に従事していた。そして昭和52年12月には取締役に就任したが、被告会社は当時でも20名程度の零細企業であり、役員と言っても名ばかりで、原告は引き続き一般の社員と同様の営業の仕事に携わっていた。
被告会社の代表取締役は1981年12月、社員に期末手当を支給するため銀行から借り入れようとしてその保証を原告に依頼したが断られ、同月22日の定時株主総会では原告を取締役に再任せず、翌1982年1月には、それまで19万4000円であった原告の基本給を14万円に削り、役員手当5万5000円を削除し、新たに食事手当5000円、臨時手当2万円及び補助金2万6000円計5万1000円を加え、さらに同年3月からは役職手当2万5000円を加えたものの、同年7月からは基本給14万円のほか皆勤手当3000円、食事手当5000円、補助金2万1000円計2万9000円を支給するに過ぎなくなった。
1982年12月、原告担当の被告会社の得意先であった株式会社水原総業が京都地裁に和議開始の申立てをなし、それに伴って同裁判所はそれに伴う保全処分の決定をした。そのため被告会社は水原総業から134万余円の売上げが回収不能になった。また原告の営業成績(売上)は1981年が2500万円余であったものが1982年には1580万円余に低下した。被告会社は1983年4月原告の基本給をさらに11万5000円に減額した。
原告は賃金の差額、賞与金、慰謝料を請求して訴訟を提起した。
判決のポイント
賃金は雇用契約の主要な内容をなすものであって、使用者が一方的に減額出来ないことはいうまでもないところ(労働基準法91条が就業規則で減給の制裁を定める場合であっても、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない旨規定しているのは、労働者の非違行為に対し予め就業規則で制裁として定める減給であっても右の限度に止めなければならず、…
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