書泉事件(平4・5・6東京地判) 違法ストの損害賠償責任は役員ら個人にも及ぶか ★
組合と役員に連帯責任
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、会社がピケッティングを伴ったストライキによる損害を、労働組合及びその実行に加わった役員らに対して請求した事案である。
すなわち、組合は昭和53年春闘に際し、長期間に渡り断続してピケッティングを伴ったストライキ(ピケスト)を実施したが、ピケの態様は会社の2つの書籍小売店舗の出入口に組合員らが佇立しあるいは座り込み、顧客の自由な出入を阻止するものであった。
これにより書籍の売上げは激滅し、毎月多大の損害を出すに至ったので、会社はピケストは違法だとしてその損害9971万1000円を組合のみならずピケストに参加した執行委員、副委員長(2名)、書記長及びピケストに加わった外部支援労働者3名に対しても請求したものである。
違法争議行為について使用者は組合幹部らに対し懲戒処分で対応する例も多いが、本件では民事上の損害賠償責任を求めたのである。主な論点は
①本件ピケストが違法かどうか
②違法である場合、役員ら個人も損害賠償責任を負うか
という点にある。
判決のポイント
①本件ピケストの違法性について
ピケの態様は、顧客に対する不買の呼びかけやビラの配布にとどまらず、両店舗の出入口ドアやショーウィンドー等にスローガン等を記載した横断幕、ステッカー、ビラを張りめぐらし、ときには出入口前に組合員らが座り込んで将棋やトランプに興じる等、およそ顧客が自由に出入りして購入したい本を探せるような雰囲気ではない状況を作出したうえ、…
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