インテリム事件(東京高判令4・6・29) 固定残業代含む年俸額減額、本人同意は不要? 年俸決定権限の濫用で無効

2023.06.01 【判決日:2022.06.29】
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 在職中、3度にわたり年俸を減額された元従業員が、同意がなくても固定残業代の減額は有効とした一審を不服として控訴した。一審は職務給の減額のみ無効としていた。東京高裁は、年俸決定権限の濫用に当たり違法と判断。評価、査定の運用は合理性や透明性を欠き、公正性に乏しいとしている。残業時間が少ないなどの理由で固定残業代を自由に減額できないとした。

評価査定根拠欠く 自由に変更できず

筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)

事案の概要

 Xは、Y社との間で労働契約を締結して、医薬品の営業担当として勤務していたが、次のとおり3回の賃金減額が行われ、医薬品営業担当を外されるなどした後、退職した。年俸(職務給、住宅手当、みなし手当により構成される)の額は減額により960万円から、866万4000円、780万円、702万円となり、年俸額中に含まれていた「みなし手当」(時間外労働等の対価)22万円も、18万2000円、11万円、7万7000円と順次減額された。

 Xは、これら賃金減額について無効を主張して、未払差額賃金の支払請求をするほか、Y社および会社代表者Y1らの行為について、不法行為による損害賠償請求等をした。原審(東京地判令3・11・9)は、職務給の減額は違法・無効であるとしつつ、みなし手当の減額については、いわゆる固定残業代の廃止や減額は、労働者の同意等がなければできない通常の賃金の減額には当たらないというべきであるとして、有効とした。また、不法行為により退職にまで至らせた点は慰謝料等66万円とした。X控訴。

判決のポイント

1 年俸の減額

 Y社における年俸の決定において、…

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令和5年6月5日第3403号14面 掲載
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