第一小型ハイヤー事件(平4・7・13最二小判) タクシー運転者歩合給の不利益変更の合理性は? ★
必要性、内容等から判断
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
X会社は、ハイヤー・タクシーによる旅客運送業を営む会社であり、組合員約114名のA組合と約180名のB組合が併存する。X会社では、昭和54年以来、基準内賃金については、前年度より平均5197円引き上げ、歩合給については足切額(運賃収入総額からの定額の控除額)を27万円、支給率(足切額を控除した後の運賃収入総額に乗じる率)を35%とする計算方法(旧計算方法)によっていた。同年12月にタクシー運賃の値上げが認可されたので、X会社は歩合給の計算方法を変更するための団交を行ったが、A組合との間では3回の団交でも合意に至らず、B組合との間では、足切額を29万円、支給率を33%とする計算方法(新計算方法)の内容で合意をみて、労働協約が締結された。X会社は歩合給については新計算方法による旨の就業規則の変更を行い、所轄の労基署に届け出たが、A組合に所属するYら110名は、右就業規則変更は無効として、旧計算方法に基づき算出した金額と新計算方法により算出した支給額の差額の支払いを求めて提訴した。
第一、二審とも、本件就業規則の変更は、Yらの労働条件を不利益に変更するものであり、賃金が労働契約の重要な要素であること並びに、本件において就業規則の変更について合理性の立証を欠くなどとして、Yらの請求を認容した。
そこで、X会社は、本件就業規則の変更は有効であると主張して、上告に及んだ。
判決のポイント
最高裁は後記のように述べて、原判決を破棄し、差し戻した。就業規則による不利益変更の是非について詳細に判断しており、実務上参考に値しよう。…
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