日通名古屋製鉄作業事件(平3・7・12名古屋地判) 公休前後にタクシー乗務「兼業禁止」で懲戒解雇は
誠実な労務提供に支障
筆者:弁護士 畑 守人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は製鉄所における製品及び原材料の運搬並びに各種荷役を業とする会社であり、原告は昭和42年12月に大型特殊自動車運転手として被告に入社し、製鉄所の構内輸送の業務に従事してきた。被告の勤務体制には、勤務時間帯が順次交替する3交替勤務と常に8時から16時まで勤務する常昼番勤務の2つがあるが、3交替勤務が原則で、常昼番勤務者には新規採用者、病気回復者で身体的に多少の不安がある者などが従事していた。
原告は、3交替勤務に就いていたが、交通事故で受傷して欠勤した後の昭和52年8月16日に、事故による怪我が全治していないことなどを理由に挙げて勤務番変更願を提出し、常昼番勤務となった。原告はその後も腰痛症などの健康上の理由で常昼番勤務を継続していた。
(1) 原告は昭和54年頃からタクシー運転手として、被告の公休日の前後を利用して1カ月に4、5回位の割合でタクシーに乗務していたが、その就業形態は、被告を4時に退社すると、その足でタクシー会社に赴き、午後5時から翌朝まで乗務し、午前8時半から同11時までの間に当日の売上げを納入し、更に、公休が続くときは、次の日の朝方まで乗務し、納車した後は製鉄所正門前で停車中の自家用自動車で仮眠してから当日の勤務に就くというものであった。
(2) 被告の就業規則は、「社命又は許可なく他に就職したとき」は懲戒解雇に処する旨の定めがあるが、昭和60年2月9日に原告の二重就職が判明したため、被告は同年3月29日に原告を右規定に違反したことを理由に懲戒解雇した。
判決のポイント
労働者が就業時間外において適度な休養をとることは誠実な労務の提供のための基礎的条件であり、また、兼業の内容によっては使用者の経営秩序を害することもありうるから、…
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