関西新幹線サービック事件(大阪地判令4・6・23) コロナ禍に有給の自宅待機認められず慰謝料!? 出勤命令は裁量権の範囲内
コロナ禍で有給の自宅待機とされた日を出勤日に変更された従業員が、感染の危機にさらされたとして慰謝料等を求めた。大阪地裁は、一定のルールに基づき待機の日を割り当てたことに裁量権の逸脱濫用は認められないと判断。労働者に待機を求める権利はなく、出勤指示は重い負担や不利益を課すものでないとした。臨時に出勤を命じることがあると組合と協定していた。
不利益大きくない 労働組合とも協定
筆者:弁護士 岩本 充史(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、新幹線車両の清掃整備業務等を行う会社である。本件は、X1および2(以下、併せて「Xら」)が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により自宅待機を命じられた際、休業または有給休暇として取り扱われるはずであるにもかかわらず、課題の作成および提出を求められ、Xらがこれを提出しなかったところ、自宅待機が命じられるべき日に出勤を命じられ、不必要に感染の危険にさらされたなどと主張して、前記出勤命令を不法行為として、Y社および出勤を指示したY1(所長)らに対し、慰謝料等の支払いを求めた事案である。
緊急事態宣言の発出に伴う新幹線の運行量の減少に伴い、Y社は、令和2年4月9日、B労働組合との間で要旨、①Y社は、同月9日~6月30日までの間、業務量を考慮し、必要な日または時間、自宅待機を指示できること、②Y社は、あらかじめ勤務を指示していた日に改めて自宅待機を指示することがあり、自宅待機を指示していた日または時間に臨時に出勤を命じることがあること、③Y社は、自宅待機を指示する範囲および人数について、部または事業所ごとや、従業員ごとに大きな偏りが出ないように配慮したうえで、あらかじめ定めること、④Y社は、従業員に対し、自宅待機を指示した時間または日について、その該当する勤務を就業規則44条6号に定める有給休暇として取り扱うこと等との内容の労使協定を締結した。
Y1は、本件事業所において、「業務量削減への対応について」と題する文書を発出した。この中には、前記労使協定の内容のほかに、自宅待機を命じられた従業員は、知識向上および業務改善のため配布した資料に自らが記入して次回出勤日に必ず提出すること等が記載されていた。
Xらは、提出が求められていた課題を提出しなかったところ、勤務指定表上は自宅待機とされる勤務が指定されていた日に、勤務変更通知書の交付を受け、出勤を要する勤務を指定された(本件出勤指示1)。
判決のポイント
本件出勤指示1は、…
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