安田生命事件(平4・5・29東京地判) 書面によらない有給専従合意の解約は許されるか
“贈与”の取り消しですむ
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
XはY会社の従業員であり、Y会社の従業員で組織された労働組合の執行委員長の地位にある。Xは昭和48年以来、専ら組合業務に従事し、Y会社から発令された職場でY会社に全く労務を提供せず、しかも、住居も職場発令された場所とは異なる場所に定め、約13年間にわたり賃金の支払いを受けてきた。
ところが、昭和59年に至り、Y会社とA組合との間に「組合専従者は、専従期間中は無給休職とする」旨を定めた労働協約(59年協約)が締結されたため、Y会社はA組合に対し、昭和61年9月、期間の定めのない労働協約の解約にならい、Xが引き続き組合業務に従事するのであれば、同年12月以降は無給とする旨通告し、12月以降賃金の支払いを拒否した。
これに対し、Xは、昭和48年9月に、XとY会社間及びA組合とY会社間で、Y会社がXをA組合の組合専従者として認めるとともにXに対して所定の賃金を支払う旨の合意(48年合意)が成立していたとし、①48年合意は、有給専従の合意又は協約上の時間内組合活動に対する事前包括同意の合意であり、将来労働協約で無給専従の定めがされた場合でも影響を受けないものとして成立した、②Y会社が59年協約を理由にXに対し賃金を支払わないのは不当労働行為であり許されないなどと主張して、昭和61年12月以降平成3年4月までの賃金・賞与などを訴求した。
判決のポイント
判旨は、以下の理由を述べて原告の請求を棄却した。…
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