西村産業事件(平4・4・16福岡地小倉支判) 年休取得者に対する皆勤手当のハンディは有効か
無効だが協定の趣旨生かす
筆者:弁護士 中山 慈夫(経営法曹会議)
事案の概要
被告会社では、従前毎月の所定労働日数の全部を出勤した者(年休取得者も含む)に対して皆勤手当として4000円を支給していたが、昭和63年10月、労働組合との協定(以下「本件協定」という)により、全皆勤手当を新設した結果、①、②の2種類の手当を設けて実施した。
① 皆勤手当―所定労働日数について欠勤がなく、かつ所定労働日に年次有給休暇を取得した場合には4000円を支給する。
② 全皆勤手当―所定労働日数のすべてを実際に出勤し、所定労働日に年休を取得しなかった場合には8000円を支給する。
①と②は、要するに年休取得の有無により手当支給額に4000円の格差を設けるものであったが、約2年間は右の取り扱いについて労使間で何ら問題とならないまま実施されてきた。その後、原告ら従業員は、①、②の手当の取り扱いを問題にし、労基署からも年休取得を理由に皆勤手当の支給を制限している等の是正勧告が出された。このため会社は②の全皆勤手当を廃止して、年休取得の有無を問わず、①の皆勤手当のみを支給する取り扱いとした。しかし、原告らは②の全皆勤手当は①の皆勤手当を増額した趣旨であること、及び年休取得者に対する不利益取り扱いは許されないことを理由に、年休取得の有無を問わず皆勤手当として一律8000円が支給されるべきであるとして、差額の請求を求めた。
判決のポイント
1、本件協定成立の際の労使の意思としては、従前の皆勤手当の他に、所定労働日について年休を取得せず全部出勤した者に、…
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