岩国市事件(平4・7・16山口地裁岩国支判) 事務所内を禁煙としないことが安全配慮義務違反となるか
1992.12.28
【判決日:1992.07.16】
受忍限度超えるか否かで判断
筆者:弁護士 安西 愈(中央大学講師)
事案の概要
本件は、市の職員であって、市の管理する庁舎に勤務する非喫煙者である原告が、市に対し、市がその庁舎管理権に基づき庁舎の事務室を禁煙にしていないために、原告は事務室内での喫煙によるたばこの煙を吸うこと(これを「受動喫煙」という)を余儀なくされ、健康を侵害されているとして、人格権に基づいて事務室を禁煙にすること(妨害予防請求としての差止め)を求めるとともに、市が事務室を禁煙にしていないことは原告に対する安全配慮義務に違反するとして、債務不履行ないし不法行為に基づき慰籍料請求としての損害賠償を求めた事案である。
判決のポイント
一般的に、人の生命、身体ないし健康を違法に侵害された者は、損害賠償を求めることができるほか、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている損害賠償を求めることができるほか、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている損害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。
しかしながら、人の生命、身体、健康に対する侵害には、その態様、程度に種々のものがあるところ、健康等に影響を及ぼすものであっても、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
ジャンル:
平成4年12月28日第1942号10面 掲載