大器キャリアキャスティングほか1社事件(大阪高判令4・10・14) 同じ給油所で兼業、過重労働の会社責任なし? 長時間労働解消せず慰謝料
24時間営業の同じ給油所で深夜早朝のほか、休日も副業で働いた従業員が、適応障害を発症したなどして損害賠償を求めた。自ら希望して兼業した結果として請求を退けた一審に対し、大阪高裁は、同一店舗における兼業の就労状況を本業は比較的容易に把握でき、連続かつ長時間労働を解消せず安全配慮義務違反と認定。慰謝料の支払いを命じたが4割を過失相殺している。
本業で時間把握可 労働者の過失4割
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y1社は、給油所施設の運営受託業務等を行う会社である。24時間営業の給油所を運営するA社は、B店およびC店の夜間運営業務をD社に委託し、D社はY1社に再委託していた。Y2社は、平成27年4月、A社を吸収合併し、その権利義務を承継した。
平成26年2月、XはY1社と有期労働契約を締結し、同年7月2日までの間、B店およびE店において、基本的に日曜日を休日に設定して夜間運営業務に従事した。同年2月、XはA社とも有期労働契約を締結し、毎週日曜日にB店にて日勤業務に従事した。Y1社の就業規則では、会社の承認を得ず在籍のまま他に雇用されないよう規定されていたが、Xは承認を得ていなかった。
同年3月下旬頃、Y1社のマネージャーFは、XがA社との間にも労働契約を締結していることを認識し、同年4月10日、Xに対し、週7日勤務となり労働基準法に抵触するほか、自身の体調を考慮して休んでほしい旨注意し、Xから同年5月中旬までにはA社での就労を辞める約束を取り付けた。しかし、同年6月6日以降、Xは日曜に加えて金曜にもA社で就労するようになった。同月15日、XはA社に対し、退職日を同月30日とする退職願を提出した。同月下旬および7月初頭、XはFらと面談し、同月2日から翌3日にかけて、上長の指示、命令に従う旨等の「業務指示書」への署名押印を求められたが、これを拒否した。
XのY1社とA社における労働時間の合計は、Y1社を欠勤するようになった日(同年7月2日~3日)の前日までの1カ月は303時間45分、欠勤前2カ月は270時間15分、欠勤前3カ月は271時間という状況にあった。
平成27年2月、Y1社はXに対し同年3月31日付で期間満了となる労働契約を更新しない旨通知した。
なお、平成26年7月、Xは医療機関を受診し、平成27年11月、労基署長は、Xに対し、労災法に基づく休業補償給付の支給を決定している。
Xは、本件雇止めの無効および地位確認等を請求し、また、Y1社が労働時間を軽減等すべき注意義務を怠ったこと、および業務指示書への署名押印の強要等のパワーハラスメントに適切に対処すべき義務を怠ったことは不法行為に当たり、Y2社がY1社と同様に労働時間を軽減等すべき注意義務を怠ったことは共同不法行為(予備的請求として安全配慮義務違反)となると主張して損害賠償を請求した。一審(大阪地判令3・10・28、本紙第3356号)はXの請求をいずれも棄却したため、Xが控訴した。
判決のポイント
ア Xが同一の店舗で…
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