龍生自動車事件(東京高判令4・5・26) コロナ禍で売上げ激減、全員解雇して会社解散 手続的配慮欠くとはいえず
コロナ禍で売上げが激減したため解散したタクシー会社の乗務員が、解雇無効と訴えた。請求を退けた一審に続き、東京高裁は、解雇に先立って、急激な経営状況の悪化について労働者へ情報提供することは困難だったとして、解雇が手続的配慮を著しく欠くとはいえないと判断。団体交渉を行い解雇理由の説明や資料提供は行われ、低額でも金銭を給付したことを考慮した。
団交行い資料提供 低額でも金銭給付
筆者:弁護士 岩本 充史(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、Y(一審被告、被控訴人)と労働契約を締結したX(一審原告、控訴人)が、Yから解雇されたことについて、Yに対し、当該解雇が無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、Yによる違法な解雇および本件訴訟における不誠実な態度が不法行為を構成すると主張して、Yに対し、賃金や慰謝料等の支払いを求めた事案である。
Xは、Yと労働契約を締結し、平成14年11月1日以降、タクシー乗務員として勤務してきた。
Yは、タクシー事業等を業とする株式会社であり、令和2年5月19日当時の従業員数は34人(タクシー部門30人、事務部門4人)、保有車両台数は23台であった。
Yは、Xを含めた全ての従業員に対し、令和2年4月15日、近年の売上げ低下および新型コロナウイルス感染症拡大に伴うさらなる売上げの激減により事業の継続が不可能な事態に至ったとして、同年5月20日をもって解雇するとの意思表示をした。Yの就業規則には、「やむを得ない事由のため、事業の継続が不可能になったとき」には解雇する旨の定めがある。
Yは、本件解雇予告期間中、事業譲渡に向けて候補企業と交渉したが、令和2年5月14日、成就しないことが確定した。
Yは、清算事務に従事することとなる従業員1人を除く全従業員に対し、退職合意を申し出た。これを受け、33人中、31人は申出に応じ、5月20日付で合意退職し、特別退職慰労金を受け取った。
Xは、本件解雇が無効として、上記のとおり訴えを提起した。一審(東京地判令3・10・28、本紙第3354号)はXの請求を棄却し、Xが控訴したが、本判決はXの控訴を棄却した。
判決のポイント
Yは、…
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