SGSジャパン事件(東京地判平29・1・26) うつ病回復と主治医診断、就労拒否され自然退職は 労務提供可能とはいえない
うつ病から復職可能とした主治医の診断書があり、休職満了の自然退職を違法無効と訴えた。東京地裁は発症の業務起因性を否定したうえで、主治医は、労働能力や職場の状況に関し、会社と情報共有していたとは認められないと判断。一方、産業医は復帰できないと診断し、本人は体調不良で面談を拒否するなど、労務提供できるほど回復したとは認められないとしている。
産業医復帰認めず 社内情報「共有」を
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、電子製品、食品等の鑑定、検査、検量および査定を目的として、第三者認証機関として認証サービスを業としている株式会社である。 甲は、平成21年4月1日に採用され、顧客である企業や団体の工場等に赴いて、審査業務に従事してきた。
甲は、平成23年5月ころ不眠症状を訴え、うつ病を発症し、同年8月、心療内科より向後1カ月の自宅療養を要する旨の診断を受け、1カ月の休職を申請した。以後、甲は同年10月頃から度々復職の希望を伝えたが、会社は復職を認めなかった。
会社は、平成24年9月3日付休職期間満了通知書を送付し、就業規則により同月5日をもって自然退職となる旨の通知をした。
甲は、うつ病は過重な業務等に起因する(労基法19条)うえ、平成23年11月か遅くとも24年8月末には就労が可能であり、退職の告知(解雇)は違法・無効と主張し、労働契約上の地位にあることの確認を求め、訴えを提起した。
争点は、①うつ病の発症が業務に起因するものといえるか、②甲は復職可能であったかの2点である。本判決はおよそ以下のように判示して、甲の訴えを斥けた。…
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