東海旅客鉄道事件(東京地判令5・3・27) 鉄道乗務員の年休申請を業務上支障ありと拒否 時季変更権の行使に慰謝料
2023.09.21
【判決日:2023.03.27】
新幹線の乗務員が、年次有給休暇を申請したところ就労を命じられたため、時季変更権の行使は違法として慰謝料を請求した。東京地裁は、恒常的な人員不足の状態にあり、常時、代替要員を確保できない場合、時季変更権の行使は許されないと判断。年休予定日の5日前に勤務割を発表したが、行使に必要な合理的期間を超えていたなどとして、請求を一部認容した。
常時代替確保ムリ 勤務発表は5日前
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、昭和62年4月1日、東海道新幹線および東海地方の在来線に係る事業等の運行をすることを業とする株式会社として設定された。労働者甲らは平成27年4月1日から同29年3月31日までの期間(本件期間)、会社の運輸所において新幹線の乗務員として勤務していた者である。
甲らの年休の申請に対し、会社の時季変更権の行使が労働契約に反するかが問題となった。
本件の主な争点は、①会社による時季変更権の行使が甲らに対する配慮義務に違反したものとして債務不履行があったといえるか、②恒常的な要員不足に陥った状態のまま行われたものとして債務不履行となるかである。本判決はおよそ以下のように判示して、会社の債務不履行責任を一部認めた。
判決のポイント
(1)年休の時季指定
甲らは、会社に対し、前月20日までに…
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令和5年9月25日第3418号14面 掲載