セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン事件(東京高判令4・11・16) 直行直帰のMRに事業場外みなし認めた一審は 勤怠システムで時間把握可
営業先へ直行直帰する医療情報担当者に事業場外みなし制が適用されるとした事案の控訴審。東京高裁は、勤怠管理システムの導入後は労働時間を算定し難い場合には当たらないと判断。週報と併せて業務内容等を確認できたとしている。提出された週報からは残業を要する量の業務はうかがわれず、月40時間超の残業に必要な申請もなかったとして、残業代の請求は退けた。
残業必要と認めず 本人から申請なく
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社(被控訴人・一審被告)は医薬品の製造および販売等を業とする株式会社である。X(控訴人・一審原告)は、Y社と期間の定めのない労働契約を締結し、平成29年7月より令和2年3月まで、医療情報担当者(以下「MR」)として就労していた。Y社のMRは、営業先である医療機関を訪問して業務を行う外回りの業務であり、基本的な勤務形態は、自宅から直接営業先を訪問し、その後直接帰宅するというものであった。
平成30年12月、Y社は新たな勤怠管理システム(以下「本件システム」)を導入した。それは、労働者が、パソコンまたはスマートフォンで同システムにログインした後に、打刻画面において「出勤」または「退勤」ボタンを押すことによって、出勤時間または退勤時間が打刻されるものであった。また、本件システムは、労働者がスマートフォン等の位置情報につき本件システムが利用することを許可していた場合には、本件システム上の位置情報取得機能により、打刻時点における位置情報を把握することができた。
令和2年3月、XはY社に対し、過去2年間の未払賃金等を請求するとともに、Y社が保有しているXに関するタイムカード(本件システムにより記録されているもの)等の労働関係に関する重要な資料を提出するよう請求するなどした。その後、Xは、令和2年8月、Y社を提訴した。
一審判決(東京地判令4・3・30、本紙第3384号)は、…
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