郵船ロジスティクス事件(東京地判令4・9・12) うつ病で2年弱休業状態、有期契約の途中解雇 直ちに雇用終了可能と認定
うつ病で休業中だった有期契約労働者を、期間途中で解雇した事案。労働者は、うつ病発症はパワハラが原因で労基法の解雇制限に抵触するなどと主張した。東京地裁は、心理的負荷の程度を強度とは評価できず、業務起因性を否定。休業は約1年8カ月に及び、医師の診断書からは症状の改善傾向は窺えず今後の稼働可能性は皆無として、雇用を終了せざるを得ないとした。
復職は見込めない 労災でなく私傷病
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
XはYと平成25年2月から当初3カ月、以後1年の労働契約を締結し、更新を繰り返していたが、平成29年11月、担当している社宅関連業務の外注化を理由に、平成30年4月末日をもって雇止めする旨を告げられた。Xは労働組合に加入し、Yは、団体交渉によるも雇止め前提の解決には至らず、雇止めを撤回して同年5月、契約を更新した。
一方、Xは、同年2月から抑うつ状態を理由に休業を開始し、契約更新後も就労はできず、Yは、自宅待機、休暇、欠勤、休職等いずれも有給の扱いをし、翌年5月の更新後は、同月16日から無給の欠勤とした。
Xは、平成31年1月、パワハラ等を理由にうつ病について労災申請をしたが、7月8日付けで不支給決定がなされた(Xは再審査申立)。Yは、令和元年8月27日付け「解雇通知書」により、9月30日付けで解雇する旨の意思表示をした。解雇理由として、Xが平成30年2月から病気休職となり、令和元年5月16日以降も欠勤が継続し、回復・改善の見通しが立たないことから、①労働契約法17条1項の「やむを得ない事由がある場合」、②嘱託就業規則の「勤怠が不良で、改善の見通しがないとき」、嘱託就業規則および社員就業規則の「精神または身体に障害を来し、会社業務に堪え得ず、かつ、回復の見通しが立たないとき」、③「その他止むを得ない事由」があるとき」に該当するとした。Xは、労災休業中の解雇であって労基法19条1項により無効であるとして地位確認および賃金バックペイを求めるとともに、ハラスメント等への対応が不十分だったとして安全配慮義務違反を理由に慰謝料等を請求して提訴した。
判決のポイント
1 Xの精神疾患が業務上の疾病に当たるか
Xは、平成29年12月頃、…
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