バークレイズ証券事件(東京地判令3・12・13) 外資系金融の部長解雇、高報酬で地位不安定!? 人員削減する必要性認めず
外資系金融機関の部長が、専任のポジションの廃止に伴う退職勧奨を拒否して解雇されたため、地位確認等を求めた。会社は、高報酬ゆえ地位が不安定などと雇用慣行を強調したが、東京地裁は、整理解雇を無効とした。職位廃止と解雇の必要性は別次元の問題で、人員削減の必要性を否定した。地位や職種限定の合意は認められず、降格や賃金減額など解雇回避努力も怠った。
降格や賃金減額を 職種限定合意なし
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は世界的な金融グループに属する株式会社である。Xは、A社に雇用され、A社よりY社への営業譲渡に伴い、平成18年5月1日、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結し、平成30年6月14日をもって解雇(以下「本件解雇」)された者である。
Y社の従業員の職位は、上から順に、マネージング・ディレクター(以下「MD」)、ディレクター等の5段階に分類される。
Xは、A社において、職位としてはディレクター、役職としてはMTN部長として勤務していたところ、職位および役職はそのままY社に引き継がれ、平成24年1月、MDに昇進し、平成25年7月以降は、MTN部長に加えて、シンジケーション部長を兼任した。平成26年1月、上記2部門を統括する形で、シンジケーション本部が設けられ、平成28年7月、Xは同本部部長に就任した。
平成29年10月頃、Y社のシンジケーション本部におけるMDのポジションが廃止されることが決まり、同年11月頃、XはY社より、MDとしての現在のポジションを維持するのは困難として、退職を促された。
平成30年2月1日、XはY社から、特別退職金2700万円超、有給休暇買取対価480万円超等を条件とする退職勧奨を受けたが、退職しない旨を伝えた。Xは、同年3月23日、同月27日、Y社より、特別退職金を増額する退職条件を提示されたが、これを受け入れず、同年5月、Y社に対し、新たな退職条件の提示があれば鋭意検討すること、退職条件に同意できない場合には勤務を継続することなどを伝えたところ、同月15日に本件解雇がなされた。なお、Y社は、降格や賃金の減額を検討したことはなく、Xにこれらを提示したこともなかった。
判決のポイント
ア 就業規則38条1項4号は、…
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