グッドパートナーズ事件(東京高判令5・2・2) 2カ月の派遣満了、雇止め無効とした一審は? 更新ゼロでも強い継続期待
派遣労働者に有期雇用契約の更新が確定したとのメールを送信した後の雇止めを無効とした事案の控訴審。派遣期間に合わせて2カ月契約を締結していた。東京高裁も、メールの内容は更新に強い期待を抱かせるとして雇止めを無効とした。労働契約法19条2号に基づき、従前の2カ月契約で更新したものとみなした。メールに記載のない2度目の更新の期待は認めなかった。
確約メールを送信 長期契約は認めず
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
介護の仕事を紹介する人材派遣会社であるYと派遣労働者であるXは、平成31年2月3日、同日から3月31日までの約2カ月弱の有期労働契約を締結した。Xは、同日をもって本件契約につき雇止めをされたところ、本件雇止めは無効である旨主張して、Yに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、上記労働契約に基づき、同年4月分から令和3年12月分までの未払賃金の支払い、本件雇止めが不法行為に当たると主張して、不法行為による損害賠償の支払等を求めた事案である。
Xは、Yから、平成31年2月21日、「ご契約更新の期間が確定しましたので、ご報告させて頂きます」「ご契約更新期間:2019年5月末日まで ※2ヶ月の更新が確定しました!」「個別契約書につきましては、順次発送させて頂きます」との電子メール(以下「本件メール」)を受信した。
Xは、平成31年2月25日の勤務時間終了後、本件施設の副施設長に対し、施設職員による利用者への虐待行為があったとして、その旨報告し、行政機関にも同内容の通報を行うとともに、Yに報告した。
Yは、同年3月6日、Xに対し、契約更新を取り消し、新たに仕事の紹介もしないと通知し、同月31日をもって、契約期間満了により本件契約が終了したものと扱い、本件雇止めをした。
Xは、平成31年4月16日から、別会社との間で次の内容の有期労働契約(更新あり)を締結し、夜勤専従の介護福祉士として稼働している。
一審(東京地判令4・6・22、本紙第3399号)は、本件雇止めは無効であるが、平成31年4月1日から令和元年5月31日を終期とする有期労働契約であるから同日をもって終了したこと、かつ、本件雇止めについて不法行為に基づく請求には理由がないと判断し、平成31年4月分および令和元年5月分の未払賃金から中間収入を控除した額の支払いについて認容した。これを不服としたXが控訴した。
争点は複数あるが、更新への合理的な期待の有無の点について紹介する。なお、控訴審判決は一審の判断を維持している(中間収入の控除は除く)。本件は、上告棄却・不受理(最一小決令5・9・28)で確定した。
判決のポイント
更新に対する合理的期待の有無及びその期間
(1)平成31年3月31日時点での更新の期待について
本件契約に係る契約書には、…
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