医療法人社団誠馨会事件(千葉地判令5・2・22) 研修医が病院外で夜間電話対応し割増賃金請求 待機中の労働時間性を否定
形成外科の研修医が、夜間の電話連絡等に対応するために病院外で待機していた時間について、割増賃金の支払いを求めた。千葉地裁は、待機中の生活状況は私生活上の自由時間の過ごし方と大きく異ならないとして、労働時間には当たらないとした。遠方に滞在できないという場所的な制約はあるが、電話対応や呼出出勤の回数・時間は、自由時間を阻害するものではないとしている。
私生活阻害されず 呼出頻度も考慮し
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Yが開設するA病院において研修医として勤務していたXが、Yに対し、雇用契約または労働基準法に基づき、未払いの割増賃金等の支払いを求めた事案である。Yは、平成30年4月1日、Xと形成外科の常勤医師として有期雇用する旨の契約を締結した。日直は、午前8時30分から午後5時30分(休憩60分)、当直は、午後5時から翌日午前9時となっていた。
本件病院の形成外科では、所属医師が、当番制により、終業時刻後から翌日の始業時刻まで、本件病院外で、本件病院からの問合せに対応することとされていた(オンコール当番)。また、本件病院の手外科外傷センターでは、救急隊等からの手指切断患者の受入れ可否を問う電話連絡に対し、24時間365日、本件病院の医師が直接対応する制度(切断指ホットライン)を設けており、形成外科では、オンコール当番医が、同当番担当時間中の切断指ホットラインにも対応することとされていた。
争点は多数あるが、オンコール当番日において本件病院外で待機している時間が労働時間に該当するか否かの判断部分について紹介する。…
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