栃木県事件(宇都宮地判令5・3・29) 双極性障害で傷病休暇中に出した退職願有効? 辞職承認した処分取り消す
双極性感情障害による傷病休暇中に提出した退職願は無効として、職員が辞職承認処分の取消しを求めた。宇都宮地裁は、休暇中の面談で部長らは休みが長期化する懸念に加え、復職の困難性と退職の選択肢を示唆し、職員はうつ状態の悪化も相まって適切な判断は困難だったと判示。職員は復職を希望していたが、熟慮できないまま退職願を提出し、「自由な意思」といえず無効とした。
病状から熟慮困難 面談では復職希望
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
県職員のXは、双極性感情障害等を理由に平成27年に傷病休暇および休職を取得し、同28年に復職をしたが、令和元年10月1日から双極性感情障害の診断により1カ月の予定で傷病休暇を取得した。上司および人事チームのリーダーは、同月16日にXと面談を行い、その結果、Xは同月18日に退職日を同月末とする退職願を提出し、処分行政庁はXに対し辞職承認処分(「本件処分」)をした。その後、Xはこれを不服として人事委員会に審査請求をしたが、人事委員会はこれを棄却したため、Xは提訴に至った。
Xは、本件退職願に係る辞職の意思表示は錯誤により無効であり、または詐欺を理由として取り消され、そうでなくとも、自由な意思に基づかないものであるから、これを前提としてなされた本件処分は違法であると主張して、その取消しを求めるとともに、違法に退職を強要したと主張して、国賠法1条1項に基づき、損害賠償およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めた。
判決のポイント
1 過去に傷病休暇…
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