システムディ事件(東京地判平30・7・10) 月給や賞与減額に同意しなかったと差額求める 賃金規程で降給の根拠なし
基本給や賞与を理由なく減額されたとして、未払賃金等の支払いを求めた。会社は、業務成果の不良や異動が理由と主張した。東京地裁は、降給に関する具体的かつ明確な基準がないとして請求の一部を認容。賃金規程には各人の能力等を考慮して賃金を決定する規定があるが、降給する事由や金額の算定基準、判断の時期や方法は不明だった。異動等の場合も減額に根拠が必要とした。
各人別決定認めず 具体的な基準必要
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Xが、Yおよびその代表取締役であるY2に対し、平成22年4月から、雇用契約に基づく賃金および賞与を理由なく減額したと主張して、Yに対し、上記雇用契約に基づき、未払賃金および未払賞与の支払等を求めたものである。
Xは、昭和38年生まれの男性である。Yはソフトウェアの製造、販売等を目的とする株式会社であり、Y2はYの代表取締役会長兼社長である。
平成19年3月22日頃、XはYとの間で、賃金は1カ月45万4500円(ただし、基準給23万円、能力給8万円、裁量労働手当5万7500円、技能手当2万7000円、住宅手当1万円、役職手当5万円の合計)、毎月末日締め当月25日払い、賞与あり、勤務地はY本社、配属は管理本部との約定で雇用契約を締結した(以下「本件雇用契約」)。
平成20年4月1日から、Xの勤務地および配属は変更された。賃金はその後、1カ月当たり基準給を23万円から15万2000円に、能力給を3万2000円から0円に、裁量労働手当を5万7500円から3万8000円に、技能手当を2万7000円から3000円に減額し、また、それに応じて賞与を減額して支払った。
本件では賃金および賞与の差額の請求のほか、ハラスメントを理由とする損害賠償請求等、争点が多岐にわたるが、YがXの承諾なく賃金を減額することができるか、本件雇用契約に基づいて定額の賞与を支払うとの合意があるのかの2点について紹介する。本判決は、Xの請求を一部認容した。
判決のポイント
賃金減額の可否
労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、…
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