A社事件(東京地判令5・3・27) 雇止めされた国際線乗務員が無期化したと主張 人事管理行う国の法律適用
オランダの航空会社から雇止めされた日本人客室乗務員が、オランダ法の適用を主張してすでに無期転換済みと訴えた。雇用契約書で日本法を準拠法としていたが、東京地裁は、オランダ法に基づき地位確認等を認めた。労務提供地を特定できず、雇入れ事業所地の法が適用されると推定したうえ、国外で指揮命令や人事評価など人事管理の中核的な業務を行っていたことを重視した。
労務提供地は不明 日本法準拠を否定
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xらは、平成22年ないし同23年、オランダの航空会社Yと更新上限5年、準拠法を日本法とする有期労働契約を締結して客室乗務員として勤務していた。
XらとYは、平成27年、労働委員会のあっせん手続きにおける和解により、労契法18条による無期転換権が発生する日の前日までの間、契約を延長する旨の合意をし、Yは、平成30年ないし令和元年、当該延長期間の満了による雇止めを通知した。Xらは、オランダ民法典668a条(以下「オランダ法条」)により無期転換されているため契約は終了していない等と主張して、Yに対し、無期の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および雇止め後の賃金パックペイ、慰謝料を請求した。
オランダ法条では、有期労働契約が36カ月を超えて継続した場合は無期契約とみなすと定められており、Xらは訴訟提起後の令和3年、雇用契約の無期化について、法の適用に関する通則法12条1項により、最密接関係地の強行規定としてオランダ法条を適用すべき旨の意思表示をした。
なお、Xらは当該労働契約の期間の定め等が人種差別を理由とするもので無効である、また、労働委員会における和解は錯誤により無効である等と主張したが、いずれの主張も退けられている。
判決のポイント
1 有期契約更新の合理的期待
有期雇用契約において、有効な更新限度の定めがある場合には、…更新限度を超えて…雇用契約が更新されると期待することについて合理的な理由があるということはできず、…
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