社会福祉法人紫雲会事件(宇都宮地判令5・2・8)嘱託再雇用後も職務の内容変わらず賞与なし? 定年理由に差別的扱い否定
定年後の嘱託職員への期末・勤勉手当の不支給について、宇都宮地裁は、差別的な取扱いに当たらないと判示。正規職員との労働条件の相違は、有期契約を理由としたものではなく、定年後再雇用が理由とした。定年前後で職務の内容等は同じだが、基本給を定年時の8割としたことを踏まえ、不支給は不合理ともいえないとした。休暇を与えなかった点には損害賠償を命じた。
基本給は8割支給 不合理といえない
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y法人(以下、Y)は、障害者支援施設を経営する社会福祉法人である。
Xは、Yと無期労働契約を締結し、定年まで勤務した後、Yと期間を1年とする有期労働契約を締結し、4回更新して退職した。
Yにおいては、正規職員(無期契約労働者)に適用される就業規則および給与規程で、正規職員には、期末手当、勤勉手当および扶養手当が支給されること、年末年始(12月29日~翌1月3日)が休日とされ、夏期休暇(8月13日~16日)を請求できることが定められていた。
これに対して、定年後再雇用の従業員は「嘱託職員」と称され、嘱託職員には、臨時職員就業規則が適用されていた。臨時職員就業規則には、期末・勤勉手当および扶養手当に関する明示的な定めはなく、夏期休暇に関する定めもないものの、長期臨時職員が日常業務に精励恪勤と認められた場合、特別手当を支給することがあるとされ、年末年始は正規職員と同様に休日とされていた。そして、Xの実情としては、期末・勤勉手当および扶養手当は支給されず、年末年始休暇や夏期休暇も付与されなかった(Yは、嘱託職員の年末年始および夏期の時期における休暇は、有給休暇で対応していた)。
Xは、令和2年(労契法旧20条が適用される期間)までの期末・勤勉手当および扶養手当の不支給、年末年始休暇および夏期休暇の付与がなかったことについて、労契法旧20条違反の不法行為に当たり、また、令和3年(パート・有期雇用労働法〈以下、パート有期法〉8条・9条が適用される期間)の期末・勤勉手当の不支給につき、主位的には同法9条違反の不法行為に、予備的には同法8条違反の不法行為に当たると主張して、損害賠償等の支払いを請求した。
判決のポイント
ア (改正前の)労契法20条の不合理性の判断
Yにおける期末・勤勉手当は、…
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