国・中央労基署長事件(東京地判令3・6・28)  不当な出向命令で適応障害発症したと労災請求 強い心理的負荷認められず

2024.06.20 【判決日:2021.06.28】
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 適応障害を発病したのは異動等が原因として、車掌が労災不支給の処分取消しを求めた行政訴訟。部下への暴行後に訓告のほか出向を命じられ、処分は不必要かつ不相当と主張した。東京地裁は、重大な非違行為で指導教育する必要性が高く、処分等に人事権の逸脱濫用は認められず心理的負荷に強く影響したとはいえないとした。離婚など業務以外の負荷も否定できないとしている。

適法な人事権行使 業務以外に要因も

筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)

事案の概要

 Y社は新幹線の運行業務等の鉄道事業等を営む株式会社である。Xは、平成9年にY社に入社し、同26年1月以降は指導車掌として業務に従事していた。

 平成28年6月22日、Xは新幹線に車掌長として乗務中、同乗した部下Iの勤務態度に腹を立て、同人の脛部をつま先で複数回蹴った。同年7月20日、Y社はXに対し訓告処分をし、また、「事前通知書」と題する書面を交付して、同年8月1日付で、令和元年7月31日までの間、Z社への出向を命じる旨通知した(本件暴行にかかるY社のXに対する一連の対応を以下「本件会社対応」)。

 平成28年7月21日、Xはストレス性障害の診断を受け、同日以降は休職し、同年9月13日、適応障害(以下「本件疾病」)の診断を受けた。本件出向命令を通知された翌日から同30年12月まで病気休職したことから、XはZ社での業務に従事しなかった。

 なお、Xは、平成26年より夫婦間の関係が悪化し、同28年3月には妻との間に、Xが婚姻費用を支払うほか、自ら家賃を負担し賃貸住宅に居住したうえで、妻子の居住する自宅の住宅ローンおよび管理費を負担する旨の調停が成立した。また、Xは、同17年9月から同19年12月まで「抑うつ状態」、「うつ病」により、同22年11月から23年2月まで「重度ストレス反応」により、同26年10月から同27年1月まで「急性ストレス反応」による通院歴がある。

 平成28年12月、Xは、本件会社対応により本件疾病を発病したとして、労基署に対し、労災法に基づく休業補償給付の請求をし、また同29年1月、療養補償給付の請求をした。本件処分行政庁は、同年5月、本件疾病の発病は業務上の事由によるものとは認められないとして、いずれも不支給とする処分をした。そこで、令和元年8月、Xは、本件各処分の取消しを求める本件訴えを提起した。

判決のポイント

 労働者の疾病等に業務起因性が認められるためには、業務と当該疾病等との間に条件関係があることを前提として、…

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令和6年6月24日第3454号14面 掲載
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