久 日本流通事件(札幌地判令5・3・31) 「売上げの10%」で計算する固定残業代は有効か 時間外労働の対価と認めず

2024.07.04 【判決日:2023.03.31】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

 「売上げの10%」を固定残業代として支給された貨物ドライバーが、未払いの割増賃金を請求した。札幌地裁は、雇用契約書には手当の趣旨や算定方法の記載はないなど、時間外労働等の対価とはいえないと判断。採用面接や給料日にも説明はなかった。手当は時間の長短にかかわらず一定額を支払うもので、通常時の売上げで算定する部分が含まれ、残業時との区別ができないとした。

規定や説明を欠く 所定労働分が混在

筆者:弁護士 野口 大(経営法曹会議)

事案の概要

 本件は運送会社がトラック運転者に対して売上げの10%を残業手当として支払っていた場合、それは残業代といえるのか否かが問題となった事案である。結論として残業代とはいえないと判断された。

判決のポイント

1 (固定残業代が有効か否かを判断するためには)労働契約における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である。…上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ、当該手当がそのような趣旨で支払われるものとされているか否かは、当該労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきであり、その判断に際しては、当該手当の名称や算定方法だけでなく、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする労働基準法37条の趣旨を踏まえ、当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け等にも留意して検討しなければならない(最一小判令2・3・30)。

2 これを本件についてみると、…

この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら

労働新聞電子版へログイン

労働新聞電子版は労働新聞購読者専用のサービスです。

詳しくは労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内をご覧ください。

ジャンル:
令和6年7月8日第3456号14面 掲載

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。