学校法人松山大学事件(松山地判令5・12・20) 過半数代表選出で投票しない人は多数派扱い!? 信任明確といえず協定無効
裁量労働制の労使協定は無効と割増賃金等を求めた裁判で、松山地裁は、過半数代表者の信任票は約25%にすぎず協定を無効とした。投票しなかった場合に「有効投票による決定に委ねた」とみなす規定があったが、有効票の内容は事前に分からず、選出を支持したことが明確な民主的手続きとはいえないとした。正確な時間を算出できず原告主張の7割相当の支払いを命じた。
委任の内容不明で 裁量制適用を否定
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y大学(以下「Y1」)の過半数代表者の選出に関する規程には、選挙委員会の構成員に関する規定や、信任投票において、選挙権者が投票しなかった場合は、有効投票による決定に委ねたものとみなす旨の規定があった。
教授職にあるXらは、平成29年度の過半数代表者の選出手続きに瑕疵があったとして、選出された過半数代表者が締結した専門業務型裁量労働制の労使協定の効力を争い、裁量労働制無効を前提に計算した時間外労働等の未払い賃金を請求し、また、平成30年度の過半数代表者選任に際してX1教授が立候補しようとしたのに対し選挙妨害があったこと等を理由に、Y1およびY2教授に不法行為が成立するとして損害賠償を請求して提訴した。
一方、Y2は、X1のSNS投稿がY2の名誉毀損に該当するとして、X1に対し民法723条に基づき、投稿の削除を求めるとともに、損害賠償を請求して提訴した。
争点は多岐にわたるが本稿では、過半数代表者選任について取り上げる。
判決のポイント
1 過半数代表者の選出手続について
過半数代表者の選出手続は、労働者の過半数が当該候補者の選出を支持していることが明確になる民主的なものである必要がある…。平成29年度の過半数代表者の選出は、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら