医療法人社団Bテラス事件(東京高判令5・10・22) 休憩室を秘密録音、陰口言った院長へ賠償請求 揶揄する会話が不法行為に
2024.08.29
【判決日:2023.10.22】
職員の歯科医師が控室を秘密裏に録音したところ、院長らに揶揄されていたことから、不法行為に当たる等として損害賠償を求めた事案の控訴審。東京高裁は、院長の地位や立場を考慮すると名誉を毀損し侮辱する内容の会話に興じることは就業環境を害するとして、一審判決を変更して慰謝料の支払いを命じた。秘密録音は、著しく反社会的な手段とはいえないとして証拠能力を認めた。
“証拠能力”認める 発言者の地位考慮
筆者:弁護士 野口 大(経営法曹会議)
事案の概要
本件は歯科医院を運営する医療法人に雇用されている女性歯科医師X(一審原告)が、①歯科医院のY2(一審被告、院長であり、医療法人の理事長でもある)から不法行為(ハラスメント)を受けたと主張してY2および医療法人Y1(一審被告)に対して慰謝料を請求するとともに、②使用者であるY1が安全配慮義務を果たしていないので育児休業終了後も労務の提供ができないとして、民法536条2項に基づいて賃金全額を請求等した事案の控訴審である。
裁判所は①については一部不法行為を認定して20万円の慰謝料を認容し、②についてはY2が辞任したことによって安全配慮義務が果たされたとして、それ以降の賃金請求を認めなかった(育児休業終了からそれまでの不就労期間に対する賃金請求は認めた)。
判決のポイント
1 争点①(不法行為の成否)について
(1)診療予定表上の診療予定時間の変更等
Xは、…
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令和6年9月2日第3463号14面 掲載