日本HP事件(東京地判令5・6・9) 管理職から降格、社内資料で降給ルール周知? 基本給減額の根拠欠き無効
能力不足等を理由とした管理職から一般職への降格は無効として、減額分の支払いを求めた。降格時の月給の変換式は、資料としてイントラネットに公開されていた。東京地裁は、給与規程や降給規程に資料への委任規定がなく、資料を労基署へ届け出ていなかったことなどから、就業規則とは認められないと判断。降給規程で定める降給の条件は、資料の内容から明らかでないとした。
委任規定なかった 労基署へ届け出ず
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Yの従業員であるXが、管理職から非管理職への降格に伴う賃金の減額について、合意や就業規則の根拠規定がなく、また降格の合理的理由もなく無効であると主張して減額分を請求した事案である。
Yの社員給与規程には、職務または職務レベルの変更により、現行給与が変更後の職務レベルの給与レンジ上限を超える場合には降給を実施する旨が定められ、管理職の降給に関する規程(以下「本件降給規程」)の第2条(降給)には、「職務または職務レベルの変更により、給与レンジが下方に位置する新職務に異動した場合は、降給を実施することがある。その場合、新給与は、新職務に対応する給与レンジ内で決定する」との定めがある。また、社員に対して制度を説明した資料には、管理職かつ非営業職の者が、一般社員かつ非営業職に変更となった場合の月額基本給の変換式も示されていた。
判決のポイント
1 本件降格は、…管理職から非管理職に降格し、これに伴って賃金を減額するものであるところ、会社が労働条件である賃金を、労働者に不利益に変更するには、会社と労働者との合意又は就業規則等の明確な根拠に基づいてなされることが必要と解するのが相当である。
2 本件降給規程2条は、…職務等の変更に伴い降給があり得る旨が記載されているが、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら