国・中労委(河合塾)事件(東京地判令5・9・26) 塾講師と業務委託契約拒否し不当労働行為に? 中間収入控除せず支払いを
ビラ配布などを理由に組合員である塾講師の委託契約を締結、更新しなかったことが不当労働行為とされた予備校が、中労委命令の取消しを求めた。東京地裁は、請求を棄却した。バックペイの支払命令に関して、中間収入を控除しなかった中労委命令に裁量の逸脱濫用はないと判断。再就職の難易等を勘案すると、不当労働行為が組合活動に与えた侵害の程度は深刻としている。
再就職の影響勘案 組合活動侵害した
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
大手予備校を運営する学校法人(甲法人)は、講師Bとの間で、平成2年度以降、出講契約(業務委託契約)を締結し、非常勤講師として授業を任せてきた。なお、Bは、22年に甲法人の講師らによって組織された労働組合(A組合)の書記長を務めてきた。Bは25年8月、甲法人の校舎講師室において、無許可で労働契約法改正のパンフレットを配布し、それ以前の24年11月にも甲法人の関連会社校舎の講師室内でA組合のビラを無断で配布していたことから、甲法人はBのこれらの行為等を理由に、26年度において出講契約を締結せず、同年度の春期講習も担当させず、またこれらの是非を議題とするA組合が申し入れた団体交渉にも応じなかった。
A組合(申立人)は、愛知県労働委員会に対し、甲法人(相手方)のこれらの行為が労組法7条1~3号の不当労働行為に該当する旨主張して救済を申し立てた。これに対し、県労委はA組合の主張の一部を認め、Bの原職復帰やバックペイの支払等を命じ、中労委も初審命令を支持して甲法人とA組合双方の再審査申立てをいずれも棄却した。そこで、甲法人は中労委命令のうち再審査申立てが棄却された部分の取消しを求めて、訴えを提起した。
本件の争点は、まず①Bが労組法上の労働者に当たるか、②平成26年度出講契約を締結しなかったことが不利益取扱いおよび支配介入に該当するか、③春期講習を担当させなかったことも②同様に不当労働行為に該当するか、④団体交渉に応じなかったことが労組法7条2号の団交拒否に該当するか、⑤初審命令が中間収入を控除せず全額のバックペイ支払等を命じたことが裁量を逸脱して適法性を欠くかの5点である。
本判決は、およそ以下のように判示して、甲法人の請求を斥けた(なお、東京高判令6・7・18は、控訴棄却)。
判決のポイント
①労務提供関係の実態にも着目した上で、(1)労務提供者が…事業遂行に不可欠な労働力として…事業組織に組み入れられているか、(2)労働条件や提供する労務の内容の全部又は重要部分を甲法人が一方的・定型的に決定しているか、…
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