勝英自動車学校事件(東京地判令5・10・26) 教習指導の国家資格取って退職、費用返還請求 貸与で「賠償予定」違反せず
自動車学校が、退職した教習指導員に国家資格の取得費用の返還を求めた。教習指導員は、損害賠償の予定に当たり違法と主張した。東京地裁は、本来本人が費用負担すべきところ費用を貸し付けたもので、資格は転職活動等で有利になるなどとして、貸与を有効とした。資格取得後は手当が支給され借りた金額の回収は容易であり、返還免除に要する3年も長期でないとしている。
転職活動も有利に 3年勤務なら免除
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Yは、令和4年4月1日、X自動車学校(以下「X」)と雇用契約を締結し、教習指導員見習いとして事務作業等に従事するとともに、教習所内で事前教養・事後教養を、A研修所で講習を受けて、翌月、公安委員会の審査を経て教習指導員資格を取得した。
Xは、Yと以下の内容の免除特約付準消費貸借契約(以下「本件準消費貸借契約」)を締結した。①Xが研修所に47万9700円を支払い、また所内研修の人件費等を14万5000円と設定し、これらをXが立て替えて支払い、立替分について消費貸借の目的とする、②Yは、教習指導員資格取得後3年が経過する前にXを退職するときは退職時までにXに対し貸付金を支払わなければならない、③3年間を超えて勤務し続けた際は貸付金の返還を免除する。
Yが翌年1月に退職したことから、Xは本件準消費貸借契約に基づき、貸金62万4700円および遅延損害金の支払いを求めて提訴し、これに対しYは本件準消費貸借契約は労基法16条に抵触し無効であると主張した。
判決のポイント
1 本件準消費貸借契約における貸金額
(本件契約書の)「A研修所に対する講習等の費用」及び「立て替えて支払い、当該立替分」という文言(は)、XがA研修所に対して支払った実費分と解するのが相当であり、これにXにおける事前教養及び事後教養の人件費等が含まれていると解することはできない(から)、本件準消費貸借契約における貸金額は47万9700円である。
2 労基法16条によって無効となるか
教習指導員資格は、…
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