社会福祉法人紫雲会事件(東京高判令5・10・11) 定年後は賞与なし、差別でないとした一審は? 責任異なり不支給を認める

2024.11.28 【判決日:2023.05.11】
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 定年後の嘱託職員が、期末・勤勉手当の請求を棄却した一審を不服として控訴した事案。東京高裁も、不支給は不合理とはいえないと判断。正規職員とは業務負担と責任に差異があり、手当には正規職員の勤続の奨励も含むうえ、定年時の8割の基本給が支給されていたことを考慮した。不支給は有期雇用を理由としたものではないとした。扶養手当に関する請求も退けている。

勤続奨励する趣旨 基本給は8割支給

筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)

事案の概要

 X(一審原告)は、障害者支援施設を経営するYで勤務し、Yを定年退職後に、有期労働契約社員(以下、嘱託職員)として勤務を継続した。

 正規職員は、期末・勤勉手当および扶養手当が支給され、年末年始(12月29日~1月3日)が休日とされ、夏期休暇(8月13~16日)を請求できた。一方、嘱託職員は、期末・勤勉手当、扶養手当、および夏期休暇に関する明示的な定めはないものの、年末年始(12月29日~1月3日)は休日とされていた。嘱託職員としての勤務期間におけるXの実情は、期末・勤勉手当および扶養手当は支給されず、臨時職員就業規則の定めがあるにもかかわらず年末年始休暇が付与されず、夏期休暇も付与されなかった。

 Xは、労契法旧20条の適用期間につき、期末・勤勉手当、扶養手当の不支給、および年末年始休暇と夏期休暇の付与がなかったことが、労契法旧20条違反の不法行為に当たり、また、パート・有期雇用労働法8条・9条の適用期間につき、期末・勤勉手当の不支給が、主位的には同法9条違反の、予備的には同法8条違反の不法行為に当たると主張し、損害賠償等の支払いを請求してYを提訴した。

 一審判決(宇都宮地判令5・2・8、本紙第3447号)は、年末年始休暇および夏期休暇を付与しなかったことは違法とし、それによる損害賠償請求を一部認容したが、その他の請求を棄却した。これに対しXが控訴したのが本件判決である。

判決のポイント

 中核的業務として…例示された各業務については、正規職員と嘱託職員(X)の…仕事の内容において本質的な差異はなく、…

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令和6年12月2日第3475号14面 掲載
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