日本コーキ事件(東京地判令3・10・20) 溶接技術は期待はずれ、中途採用後1カ月でクビ 試用期間中の解雇が有効に
溶接経験がある技術者を中途採用した機械メーカーが、入社1カ月で期待はずれだったとして試用期間中に解雇した事案。東京地裁は、会社が期待した技術水準に達する見込みがないと判断したことは合理的とした。小規模で即戦力を雇う必要性が高かったとしたうえ、職務経歴書等の内容から即戦力として期待するのが自然だが、本人が作成した数百点の製品は期待と乖離していた。
職務経歴書と乖離 製品を数百点確認
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは、食用油濾過機の製造等を業とする株式会社である。Yの11月9日当時の社員数は44人であった。
Xは、11月9日、Yとの間で、試用期間を3カ月とする、期間の定めのない労働契約を締結した。Xは、当時50歳であった。Xは、Yに雇用された後、Yの製造部板金課溶接1係に配属された。溶接1係には、B係長およびXを含め、5人が配属されていた。
Yの就業規則には以下の規定がある。
「第8条 新たに採用されたものについては、採用の日から3ヶ月間を試用期間とする。但し、会社が認めたときは、試用期間を短縮し、または設けないことがある。
(1)試用期間中または試用期間満了時に、技能、勤務態度、人物及び健康状態に関して、従業員として不適当と認めたときは解雇する。」
Yは12月13日、Xに対し、解雇の意思表示をした。YがXに交付した解雇通知書には、本件解雇の理由として、以下の記載がある。
「1 弊社就業規則第8条(1)に基づきます。
2 具体的には、貴殿は弊社の溶接担当社員募集に応募され、弊社も貴殿の履歴書、職務経歴書により、溶接を長年に亘り経験し、専門技術を習得されているという前提で採用させていただきました。しかしながら、入社後の貴殿の溶接の技量は弊社が要請していた基準に全く及ばず、弊社としてもその都度指導してまいりましたが、貴殿において技能の向上が認められず、また改善する意欲も認められなかったため、上記のとおり解雇することになりました。」
本件は、Xが、解雇は無効であると主張して、労働契約上の地位を有することの確認等を求める事案である。
判決のポイント
本件労働契約には、Yにおいて、Xが3か月の試用期間中に技能、勤務態度、人物及び健康状態に関して、社員として不適当と認めたときは解約することができる旨の解約権が留保されている。その趣旨は、…
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