学校法人コングレガシオン・ド・ノートルダム事件(福岡地裁小倉支判令5・9・19) 解雇無効の判決後も復帰できず遠隔地へ異動に 不当な動機疑われ配転無効
解雇無効の判決後も9カ月間にわたり復帰させてもらえず、福岡県から福島県へ転勤を命じられた教員が配転無効と訴えた。福岡地裁小倉支部は、不当な動機、目的が強く疑われるうえ、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負うとして配転を無効とした。敷地内への立入りすら禁じていたことも考慮した。異動に応じる旨の誓約書があり、勤務地限定の合意は否定した。
著しい不利益負う 勤務地限定は否定
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成5年に訴外消滅法人旧Z学園に採用され、平成20年に同学園が学校法人Y1に吸収合併された後は、A学園(以下「本件学校」)の教員として勤務をしていたが、平成29年8月解雇された。Xは、解雇無効を主張して提訴し、一審(福岡地裁小倉支判令元・11・7)では解雇有効とされたものの、控訴審(福岡高判令2・8・27)において解雇無効とされ地位確認の判決を得た。同判決は令和3年1月19日、上告不受理で確定したが、Xは学校への復帰をさせてもらえないまま、同年10月、Y1は、福島市所在のB学院への配転を命じた。
Xは、配転命令は無効であると主張して、Y1に対し、B学院での就労義務がないことの確認を求めるとともに、本件学校の設置者がY1からY2学園へ変更されたことに伴い、労働契約上の権利関係がY2学園に承継されたと主張して、Y2学園に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認およびB学院での就労義務がないことの確認を求めて提訴した。
判決のポイント
1 勤務地限定特約の有無
学校法人の合併や学校の新設などに伴い、採用時に存在しなかった新たな職場で勤務する可能性が事後的に生ずることは、一般的にあり得ることである上、Y1の…就業規則には、業務の都合による配置転換等の異動に関する定めがあり、Xは、旧Z学園に配置換えや勤務場所の変更があっても異議がない旨(の)誓約書を提出している。…勤務地を本件学校に限定する旨の黙示の合意が存在したと認めることはできない。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら