ビーラインロジ事件(東京地判令6・2・19) 定額残業代導入時に同意得て規則変更したが… 不利益の説明不十分で無効
定額残業代の導入に伴い、新たな労働契約を締結したドライバーが、割増賃金とは認められないとして残業代の支払いを求めた。東京地裁は、会社の説明では時間単価が2割以上減るという不利益を認識できず、「自由な意思」で変更に同意したとはいえないと判断。割増賃金の算定基礎すら把握困難とした。給与規程も改定したが、変更の必要性は認められないとしている。
時間単価が減額に 必要性認められず
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、一般貨物自動車運送事業および貨物利用運送事業等を営む会社であり、甲らは、少なくとも平成28年10月11日から30年10月10日までの間(請求対象期間)、トラック運転者として勤務した労働者である。
会社は、平成27年3月1日、A社との合併と同時に同日付の就業規則および給与規程を施行した。
会社は旧給与体系の各種手当を廃止し、定額残業代を新設することとし、29年3月、新たな給与体系への変更に関する説明会を実施したうえ、口頭または書面による同意を得た従業員から、新しい給与体系により給与を支給していった。
会社は、29年5月末頃から7月頃にかけて、新給与体系を反映した労働条件通知書兼労働契約書を各従業員に対して提示し、甲らは署名押印した。甲らは請求対象期間の給与について、残業代の算定に関して基礎賃金に含まれるべき手当が含まれておらず、また、給与体系の変更は認められず、新設した定額残業代を基礎賃金から控除することは許されないと主張して、会社に対し、未払割増賃金等を請求する訴えを提起した。
本事案の主な争点は、(1)旧給与体系における時間外職能給、夜勤・長距離手当、特別手当、特務手当などは、割増賃金の支払いに当たるか、(2)新給与体系への変更は認められるか、仮に、これが認められる場合に定額残業代の支払いが割増賃金の支払いと認められるか(労基法37条、労契法7条、8条、10条)である。本判決はおよそ以下のように判示して、甲らの訴えを認め、請求の一部を認容した。
判決のポイント
(1)労基法37条の割増賃金を支払ったものといえるためには、通常の労働時間に賃金に当たる部分と同条の割増賃金に当たる部分とを判別できることが必要である。
雇用契約において、…
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