JR東海(変形労働時間制)事件(大阪地判令6・3・27) 1カ月変形制の運転士、勤務割に「空白日」が!? 事前特定なくても変形可能
新幹線の運転士が、勤務指定表が一部空白となっているのは1カ月変形労働時間制の要件を満たさないとして、割増賃金等の支払いを求めた。大阪地裁は、運輸交通業の予備勤務者に当たり、あらかじめ勤務割の一部を特定せずとも、週平均40時間を超えない限り変形制を採ることができるとした。年次有給休暇の代替要員として乗務した場合も予備勤務に当たるとした。
予備勤務者は特例 週平均40時間内で
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、旅客鉄道事業等を営むYに雇用され、新幹線運転士として勤務していたXらが、Yに対し、Yは、就業規則上、毎月25日までに交付する勤務指定表で翌月の具体的な勤務内容を明示すべきであるにもかかわらず、一部の日を空白にしたものを交付したことが、変形労働時間制(労基法32条の2)の要件を満たさないと主張して、雇用契約に基づき以下の割増賃金等の支払いを求めた事案である。
本件の争点は、①Xらに適用されている変形労働時間制が有効か、②Xらの割増賃金額、③Xらの一部の者について消滅時効が成立するか、④本件各空白日の指定が不法行為に当たるかおよび損害額であり、本稿では①について紹介する。
判決のポイント
1 本件変形労働時間制は有効か
労基法32条の2は、就業規則等により1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間を超えない定めをした場合においては、法定時間の定めにかかわらず、その定めにより、特定された週において一週の法定労働時間を又は特定された日において一日の法定労働時間を超えて労働させることができる旨を定めているところ、この規定が適用されるためには、…
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