アメリカン・エアラインズ事件(東京地判令5・6・29) 収益悪化して人員削減必要、60歳で退職扱いは 定年再雇用 解雇法理の適用否定
航空会社が収益悪化等を理由に定年後再雇用を拒否した事案で、東京地裁は地位確認請求等を退けた。定年退職であり解雇権濫用法理の適用や類推の基礎を欠くとした。定年時でも再雇用の期待に基づき、契約成立の余地はあると認めたが、労働条件が特定されていなかったうえ、就業規則の退職事由に事業縮小等を規定していたことから、再雇用の合理的期待を否定した。
合理的期待もなし “退職事由”に該当
弁護士:石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
令和2年当時、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受けて航空会社であるYの収益は著しく悪化し、日本支社においても人員削減施策を講じ、定年後再雇用についても、同年9月頃、これを中止ないし一時的に凍結することとした。
Yの社員Xは、令和2年12月31日付で定年退職となるに際し、定年後再雇用を希望したが、Yは、経営状況や人員削減の必要、定年後再雇用も停止せざるを得ないこと等を説明して、再雇用を拒否した。
Xは、(1)主位的には、①就業規則上、YにはXの定年後再雇用の申込みを承諾する義務がある、あるいは②雇止めに関する労契法19条2号の適用もしくは類推適用があるとして、XY間ではXの定年後も、有期契約となること以外は定年前と同一の労働条件で労働契約が成立していると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払賃金の支払いを請求した。また、地位確認が認められないとしても(2)予備的に、再雇用拒否は債務不履行または不法行為であるとして、債務不履行等の損害賠償請求として5年間分の賃金相当額の一部等の支払いを請求して提訴した。
判決のポイント
1 就業規則の定年後再雇用の規定
就業規則67条2項ただし書(定年の時点で69条の解雇事由又は65条の退職事由に該当する者は再雇用の対象としない)について、…
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