函館バス事件(函館地判令5・10・24) 配転命令拒否して欠勤続けた組合員を懲戒解雇 協約の“事前協議”せず無効

2025.04.17 【判決日:2023.10.24】
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 配転に応じず無断欠勤したとして懲戒解雇された組合員が、労働協約で定める事前協議なしの配転命令は違法無効として、地位確認等を求めた。函館地裁は、事前協議の要件を欠く配転を無効とした。協約書には双方の署名押印がなかったが、同義の規定がある昭和30年の協約書には双方の押印が存在し有効に成立しており、その後、規定が改廃された事実はないとしている。

改廃した事実なく 過去に双方が押印

筆者:弁護士 岩本 充史

事案の概要

 XらはY会社の従業員であったところ、Y会社は、X1~4に対して異なる営業所への配置転換をそれぞれ命じた。これに対し、X3は一旦勤務をしたものの、その後、Y会社を退職し、X4は勤務できないとしてY会社を退職し、X1およびX2は、配転命令が無効であるとして配転先での勤務をしなかったところ、無断欠勤を理由に懲戒解雇された。

 本件は、Xらが、各配転命令は違法・無効であるところ、X1およびX2に対する懲戒解雇も違法・無効であり、X3およびX4は違法な配転命令によってY会社を退職せざるを得なくなったと主張して、Y会社に対しては労働契約または不法行為に基づき、Y1に対しては会社法429条1項に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認や損害賠償等を請求した事案である。

 本件の争点は、①Y会社とY会社の従業員等で組織された労働組合(以下「I支部」。なお、XらはI支部の組合員であった)との間の労働協約書(以下「本件協約書」)7条2項が有効であるか、②本件配転命令は配転命令権の濫用に当たるか、③本件配転命令が不当労働行為に該当するか否かである。

 Y会社の就業規則の概要は、以下のとおりである。

 就業規則17条は、Y会社が、事業場の都合で従業員に転勤を命じ、または職場並びに職種の変更を命ずることがあり、従業員は正当な理由がなければこれを拒むことができない旨定めている。

 I支部とY会社は、昭和30年3月22日付けで労働協約を締結した(「昭和30年協約」)ところ、同協約7条には「人事の取扱は当人の学識、経験、技能、健康及び勤務状態を考慮して公正に行う」、同10条には「会社は従業員の異動、配置転換等身分の変更については組合と協議し一方的に行わない」旨それぞれ規定された。それ以降、I支部とY会社は、平成29年3月31日まで、労働協約書の内容について、双方の代表者による押印のある覚書等によって部分的に改定および補正を行ってきたが、昭和30年協約10条を改廃する旨の覚書等は存在しない。

 また、Y会社とI支部との間の本件協約書には、7条2項で、従業員の異動、配置、転換等、身分の変更については、事前に労使協議し、一方的に行わない、と定めている。なお、本件協約書にはY会社およびI支部それぞれの代表者の記名があるのみで、署名および押印はない。

判決のポイント

 事前の労使間協議を経ていない本件各配転命令は無効となるか

 昭和30年協約は、これに係る協約書…において各頁にまたがる形でI支部及びY会社の押印が存在することに照らせば、…

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令和7年4月28日第3494号14面 掲載
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