東レエンタープライズ事件(大阪高判平25・12・20) 派遣先でセクハラ、契約解除に応じた「元」の責任は 解雇や退職の回避義務怠る
セクハラを受けた派遣労働者が、派遣先の都合による派遣契約の中途解除を受け入れた派遣元に賠償を求めた事案の控訴審。次の派遣先を見つけ給与差額を負担した「元」の対応を適切とした一審に対し、大阪高裁は解除撤回を求めるべきで、一度の抗議で容認したことは「解雇や退職を余儀なくされたりしないよう配慮する義務」に反するとした。
一度抗議して容認 撤回を求めるべき
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
派遣元事業主Yと派遣労働契約を締結したXが、Yと労働者派遣契約を締結した派遣先で就労中に、東レから派遣先に出向していたDによりセクハラ被害を受けた等につき、Yに職場環境配慮義務違反があったとして、XがYに対し、不法行為等を理由とする損害賠償請求権に基づき、精神的損害等の一部として300万円等の支払いを求めた事案である。一審(京都地判平24・10・26)は、Xの請求をいずれも棄却し、Xがこれを不服として控訴、一部認容した。以下、「平成18年2月末日での解雇回避義務」の判断に限定して事実を摘示する。
東レとYを含む東レグループの関連各社は、各事業場・工場ごとに、各事業場長・工場長等を構成員とする人権推進委員会(以下委員会)を設置している。Xは、委員会に対し、セクハラ被害を投書し、派遣元責任者Aにも伝えた。
Yは、平成17年10月2日ころ、派遣先の課長代行Gから、Dを他の職場に異動する方針であるとの報告を、同月6日ころ、派遣先の指揮命令者Cから、Dを東レテクノに応援させることになった旨の連絡を受け、…
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