医療法人清恵会事件(大阪高判平25・6・21) 母介護でパート化希望、1年で雇止め無効の判断は 更新を前提とした契約内容
母の介護のためパートに転換後、1年での雇止めを無効とした事案の控訴審。大阪高裁は一審を踏襲し、会社側には人件費を抑える意図があり、双方の事情から1年の契約を締結したもので、契約書の文言等から更新への期待は合理的と判示。業務量の減少は僅かで、1年前に合意した賃金が高過ぎるとの主張も認められないとして、控訴を斥けた。
業務量の減少僅か 賃金高くても合意
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
一審被告は、病院等の設置、経営等を目的とする医療法人である。
一審原告は、昭和53年9月21日、一審被告との間で、期間の定めのない雇用契約を締結して、以降、事務職員として勤務していたが、平成21年8月頃、一審被告に対し、母親の介護のためフルタイムでの勤務が難しいとして、新人職員1人の採用を求めるとともに、新人職員の人件費を補うため一審原告の勤務をパートタイムとすることを提案した。これを受けて一審被告は、平成21年12月から新人職員を1人採用するとともに、一審原告との間で同人の労働条件についての交渉を行った。
当時の一審被告のパートタイマー就業規則では、パートタイマーは全て有期雇用とされていたため、当初、一審被告は、一審原告に対し、有期雇用契約にて再雇用することを提案したが、一審原告が難色を示したため、平成22年3月18日、一審原告との間で、期間の定めはあるものの、一方で定年を満60歳とすることや定年後の継続雇用制度の適用を認める内容の有期雇用契約(以下「本件再雇用契約」という)を締結した。
本件再雇用契約締結後も、一審原告は従前職場(電算室)で執務に当たっていたが、平成23年1月5日、一審被告は、…
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