Y1社ほか事件(静岡地裁沼津支判平25・9・25) 事業承継が目的の「偽装解散」として解雇無効求める 経営不振で廃止やむを得ず
会社分割から約8年後に承継会社が解散し全員解雇された事案で、組合員らが再度の承継が目的の偽装解散として存続会社等に地位確認を求めた。静岡地裁沼津支部は経営不振から事業廃止は不合理とはいえないとしたうえで、事前説明がないまま解雇に至ったが、再就職をあっせんするなど手続的配慮を著しく欠くとはいえないとした。
再就職支援を評価 手続的配慮欠くが
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Xらは、いずれも平成15年4月1日に設立された静岡県富士宮市内に本店を置くタクシー事業等を営むY1社の従業員であった。Y2社は、同日に設立された同県富士市内に本店を置くタクシー事業等を営む会社である。Y1社、Y2社は、その全株式を保有するH社の前身であるY社が、平成15年4月1日に会社分割を行い、新設会社として設立され、タクシー事業等を承継した会社である。
Y1社は平成22年2月8日、株主総会の決議により解散し、同月9日、Xらに対し同日を以て解雇する旨の意思表示をした。Xらは、Y1社、Y2社またはH社らに対し、労働契約上の地位の確認と、平成22年3月1日以降の賃金または不法行為に基づく賃金相当額の損害賠償金の支払等を求めて提訴した。
判決のポイント
解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となるところ(労働契約法16条)、会社が解散した場合、雇用を継続する基盤が存在しなくなるから、その従業員を解雇する必要性が認められ、会社解散に伴う解雇は、客観的に合理的な理由を有するものとして、原則として有効であるというべきである。しかし、会社が従業員を解雇するに当たっての手続的配慮を著しく欠き、会社が解散したことや解散に至る経緯等を考慮してもなお解雇することが著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できない場合には、その解雇の意思表示は無効となるというべきである。
平成19年度及び20年度と2年連続で営業損失を計上し、21年度も更に営業損失が拡大する見込みであったこと、…
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