阪急トラベルサポート事件(最二小判平26・1・24) 海外添乗員にみなし制の適用なしとした高裁判断は 行程表に基づき時間算定可 ★
海外派遣添乗員の時間外労働時間の未払賃金請求に対して、事業場外のみなし制適用の有無を争った事案。一審はみなし制の適用を認めたが二審が否定したもので、最高裁は行程表で業務内容や手順を示し、変更する場合は個別指示するとしているほか、日報で遂行状況を確認可能なことから「労働時間を算定し難い」とはいえず、上告を斥けた。
変更時は個別指示 日報で詳細を把握
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社(株式会社阪急トラベルサポート)は、一般労働者派遣事業を目的とする株式会社であるが、労働者甲は、阪急交通社(A社)が海外旅行として主催する募集型の企画旅行ごとに、ツアーの実施期間を雇用期間と定めて会社に雇用され、添乗員としてA社に派遣されて、添乗業務に従事している者である。派遣元が作成した派遣社員就業条件明示書には、就業時間につき、原則午前8時から午後8時までとするが、実際の始業・終業時刻および休憩時間は派遣先の定めによる旨の記載がある。
派遣先であるA社は、就業日ごとの始業時刻、終業時刻等を記載した派遣先管理台帳を作成し、これらの事項についてA社から通知を受けた派遣元が、時間外労働の有無やその時間等を把握し、割増賃金を支払うこととなる。
A社が主催するツアーにおいては、出発日の7日前頃にツアー参加者に送付される最終日程表が、その契約内容等を確定させるものである。最終日程表には、発着地、交通機関、スケジュール等の欄があり、ツアー中の各日について、最初の出発地、最終の到着地、観光地等の目的地、その間の運送機関およびそれらに係る出発時刻、到着時刻、所要時間等が記載されている。
ツアーの担当の割当てを受けた添乗員は、出発日の2日前に、会社の事業所に出社して、パンフレット、最終日程表、アイテナリ―等を受け取り、現地手配を行う会社との間で打合せ等を行う。出発日当日には、ツアー参加者の空港集合時刻の1時間前までに空港に到着し、…
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